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秋の雨の日に

先日迎えた中寿美10周年記念日。

この日に、初めてご来店の、ある男性のお客様がいらっしゃいました。

軽井沢でお店を構えて41年というお店のオーナーさんです。

10年だってけっこうしんどかったのに、41年ってすごい。

今は軽井沢だけの店舗だそうですが、長野市内でも営業されていた時期もあるとのことで、お店の名前を聞いて驚きました。

店長が学生時代にお邪魔したことのある喫茶店だったのです。

中寿美の開店記念日に、偶然、同業の大先輩、しかも学生時代に度々お邪魔していたお店のオーナーさんがご来店されるなんて、なんだか嬉しいなあと秘かに感動してしまう店長。

そして、自分が学生時代に珈琲一杯でずいぶん長居していたことを、申し訳なく思い出します。

 

大先輩のご来店に、緊張しながら珈琲を淹れた店長ですが、その方は偉ぶるわけでもなく、先輩風を吹かせるわけでもなく、「軽井沢に来ることがあれば、ぜひ寄ってください」と優しくおっしゃって、お帰りになりました。

 

そしてそのしばらく後の、雨の日。

そのオーナーさんが、またいらしてくださいました。

近くでゴルフの予定が雨で中止になり、空き時間に珈琲を飲みに寄ってくださったのです。

静かな秋の雨の午前、中寿美店内で、「お客様が誰もいない時間をどう過ごすか」「冬は大変だよね」「有名人って誰か来たことある?」等々、大先輩と、同業者ならではの話ができるのを嬉しく思いながらお話していると、その方がおっしゃいました。

 

「作家の有吉佐和子さんが、ずいぶん昔に来てくれていたんだよ。

 少し前に出版社から電話がきて、『作家の珈琲』って本を出すけれども、

 有吉佐和子さんの娘さんがうちの店のことを覚えていてくれて、

 載せてもいいだろうかっていう話だったの。

 当時娘さんはまだ小さかったと思うのだけれど、

 覚えてくれていたんだなあって嬉しかったですね」

 

ん?

『作家の珈琲』? 

その本って……。

 

 

実はこの本、中寿美オープン以来の大切な常連様から、つい最近いただいたものなのです。

「いや、驚いた! この本だよ」

とオーナーさんも手に取って、該当ページを開きます。

 

中寿美の記念日に、たまたま老舗店のオーナーさんが訪れ、さらにその方が話題にした本が、偶然にも目の前にある。

なんだかいろいろ繋がっています。

 

作家という有名人だからこうやって本に載ったり、話題になったりするのだけれど、実際まるで無名の店長の記憶にも、この方のお店は存在していたわけで、何十年もお店を続けるということは、有名無名にかかわらず、本当にたくさんの人々の記憶に残るということで、それってとても素敵なことです。

 

作ったばかりの『中寿美だより』を手に取りながら、「頑張っているんだね。また寄らせていただきます」と静かにおっしゃってお帰りになった大先輩。

尊敬の思いを込めて見送った店長です。

 

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 09:40
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ちっちゃい2人

人よりも、「得しようとする」のと「ラクしようとする」のが、ダメ人間の傾向。

店長、どちらかというと「ラクしようとする」方のダメ人間です。

一応、学校や職場、社会の中では理性が利くので制御してきたつもりですが、家庭内となると話は別。

 

たとえば、シャンプーの詰め替え。

「ああ、もうちょっとでシャンプー終わりそう」と思うと、微妙に使用量を調整してしまいます。

今、使い切ってしまったら、今、詰め替えなければいけないから。今、詰め替えればいいんですけど。

詰め替えの手間を先延ばしにしようという先送り思考もありますが、もし夫が使う時に使い切ったら、きっと彼が詰め替えてくれるだろうという「人よりラクしよう」思考です。

 

ところが、次回店長がお風呂に入ると、シャンプーの量はさらにさらに減ってはいるものの、わずかに残っている。

ほんの少し残るそのシャンプーに、

「絶対に、オレの回で終わらせない。絶対に、詰め替えない!」

という夫の信念が伝わってきます。

それを感じ取った店長、心で舌打ちして今度はお湯でシャンプーを薄めます。

そんな手間があれば、新しいシャンプーを詰め替えればいいのですが、「詰め替えたら負け」という意味不明な信念を店長も持ってしまうのです。

そして、次回。

もう使い切るしかない状態のシャンプーを使ったはずのお風呂上がりの夫が、不敵な笑みを浮かべてこちらを見るのを不思議に思いながら次に店長がお風呂に入ると、シャンプーのボトルはキッチリ使い切った上にピッカピカに磨かれ、そして、詰め替えられていない。

ついに諦めた店長が、新しいシャンプーを詰め替えます。

 

そんな話を友人に話したら、彼女が言いました。

 

「ちっちゃい!! 小さ過ぎる!

 うちの小3の娘でさえ、

 『後の人が困らないように、私、詰め替えて置いたよ』

 って言うよ?

 アンタ達、ちっちゃいなー! 呆れるわ!」

 

そう、我々夫婦は小3以下の、とことん『ちっちゃい2人』なのです。自覚してます。

 

ちなみに、この極めて低レベルな沈黙の戦い、シャンプー以外も食器洗い洗剤でも繰り広げられている我が家。

でも。

確かに超低レベルなんだけど、一緒に暮らす誰かがいてこそできるこの戦い。

小さいうえに屈折した喜びを、秘かに噛みしめるダメ人間代表店長です。

 

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 09:25
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電車のボタン

実家へ帰省する際に、久しぶりに飯田線に乗りました。

飯田線と言えば、知る人ぞ知る秘境路線。各駅停車のディープなローカル線です。

店長はこの飯田線で、10代のほとんどを毎日通学しておりました。

 

実家の最寄駅の2つ手前の駅には、店長も通った中学校と、町内唯一の高校があり、この日もたくさんの学生さんが乗り込んできました。

それまでかなり空いていて静かだった車内が、一気に学生さんで溢れます。

急に賑やかになって、いろんなタイプの若者がひしめき合い、もうなんだか若いエネルギーがダーッとなだれ込んできたような感じがしました。

ほとんどの学生さんは、ドア付近のスペースに立ったまま、それぞれ話をしています。

学生時代の店長もそうでしたが、学生さんはあまり座席に座らないのです。

ボックス席で帰省の荷物と共に座っていた店長は、思いました。

「ああしまった。降りる時、人混みを掻き分けるの、面倒くさいなあ」と。

 

そこで、少し早めに席を立ち、ドア付近のスペースに向かった時に気づいたのです。

学生さんがたむろするドアの横に、大きなボタンがある。

これは、乗り降りする際に乗客が自分でドアを開閉するためのボタンです。

飯田線のドアは、自動で全開しないのです。

外気が、開け放ったドアから車内に入るのを防ぐためです(特に冬は切実)。

だから、乗り降りする人は、自分でボタンを押してドアを開け、入ったり出たりしたらすぐにまたボタンを押して閉める。

これがマナー。

店長が通学していた頃は、まだボタンは無くて、駅で停車すると自動でほんのちょっとドアが開き、乗降客はその隙間に指を入れて自力で重いドアをこじ開けるのが主流でした。

今はボタンなんですね。

 

さて、そのボタンと店長の間には何人もの学生さんがいて、辿り着くにはそこそこのエネルギーが要りそうです。

(どうしようかなあ)と思っていうちに、ついに電車は降りるべき駅のホームに入っていきました。

(ボタンを押さねば! 押さねば!)と店長が突き進むと、ボタンのすぐ前に立っていた少女が、店長の方を見ながらはにかんだような表情を浮かべ、そっとボタンに指を伸ばしたのです。

それを見て、(ああよかった、この子も降りるのね!)とホッとして、彼女に軽く会釈をしながら、開いたドアから先に下車した店長。

 

そしてホームの端で車掌さんに切符を渡し(無人駅なのです)、去っていく列車を見送りながら気づきました。

店長以外、誰も降りてない!

あの少女は、店長のために、ボタンを押してくれたのです。

荷物を抱えて必死で降りようとアピールしている、いかにも不慣れな感じのおばさんのために。

感激。

店長が、15歳の少年だったら、間違いなく恋に落ちてます。

可愛かった! あの子。

察してわざわざボタンを押してくれた彼女に、ちゃんと「ありがとう」と言うべきだったと後悔するおばさん。

 

実家に辿り着き、さっそくこの話を両親にしたところ、なんと父は以前、乗車する時にボタンの存在に気付かず、ドアが開くのをじっとホームで待っていたら、目の前で列車が発車して乗りそびれたことがあるそうです。

年老いた父が、開かずの扉の前でじっと待ち、そして1時間に1本の貴重な列車が目前で去るのを眺めながら、うら寂しいホームでぽつねんと佇む様子を思い浮かべて、なんとも切ない気持ちになる店長。

木枯らしがぴゅるる〜っと吹く感じです。

ローカルルールって難しいですよね。

 

とにもかくにも、ふるさとで、素敵な若者に出会えて幸せな気持ちになった店長でした。

 

 

 

 

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 08:57
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名前が出てこない

久しぶりに友人と二人で飲みに行きました。

飲んで喋って気が付いたのは、人の名前がなかなか出てこないということ。

お互いに「ええと、ホラ、あの人、ああ名前が出てこない!」というセリフの繰り返し。

もちろん加齢もありますが、酔っ払っているのでさらに拍車がかかります。

 

なんとか思い出しても、どこか間違えていたりするのです。

友人は「緒川たまき」を「緒方たまき」と言い、店長は「福山雅治」を「福山マサヒロ」と言い、そしてお互いかすかに違和感を感じつつも、最後まで間違いに気づかない。

まあでも、名前をちょっと間違えても、誰かはわかるので話は通じます。

 

そのうち友人が、ある俳優の名前がどうしても出てこないと言うのです。

 

友人:「ホラ、ちょっといい顔してるあの俳優」

店長:「(それだけじゃわからない!)どんな作品に出てる人?」

友人:「えーと、朝ドラに出てた」

店長:「どの朝ドラ? あ、でも朝ドラ見てないから言われてもわからないな。

    何歳くらい?」

友人:「私達より、10歳〜20歳くらい上」

店長:「(すごい幅あるね……)映画とかは? 何に出てる?」

友人:「もうね、すごいいっぱい出てる」

店長:「(全然絞れないよ……)なんでもいいから言ってみて」

友人:「あ! 今の大河に出てる!」

店長:「小林薫?」

友人:「そうっ!!! そぅお!!

店長:「『深夜食堂』って言えばいいのに」

友人:「『深夜食堂』!!」(今頃キッパリ大声で大ヒント)

 

「いい顔」「朝ドラに出ていた」「50歳代後半〜60歳代後半」「今の大河に出ている」というヒントで、「小林薫」と当てる店長、すごくない?

さすが長い付き合いの友人同士、以心伝心。

 

でも、もっとすごい会話がcafé中寿美では繰り広げられているのです。

常連様のご婦人TさんとKさんのある日の会話。

 

Kさん:「私、最近あの俳優さん、いいと思ったの。ああ名前が出てこない」

Tさん:「あら、誰かしら?」

Kさん:「ホラ、ドラマの〇〇に出ていた……」

Tさん:「あ、わかった気がする、私。あのドラマなら、あの方でしょ?」

Kさん:「わかる? そうなの、あの人〜」

Tさん:「ええわかるわ〜。あの方、いいわよね〜」

Kさん:「そうなのよ〜!」

 

そばで聞いていた店長には、誰のことなのかサッパリわからなかったのですが、どうやらお二人の間では通じている模様。

一切名前は出てきていないんだけれども。

先輩方の会話に、「自分達、まだまだだな」と考え直す店長です。

 

 

 

 

 

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 14:39
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OJT

先日、数人で話をしている時に、『OJT』という言葉が飛び出しました。

資格を取得して新たな分野に入ろうという知人のことが、話題になった時のことです。

 

「試験に受かっても、その後の進路がよくわからなくて」

「研修とかないのかな?」

「OJTはあるらしいんだけど」

「ああ、OJTはあるんだ」

「いきなりOJTっていっても、ねえ」

 

という感じ。

店長、恥ずかしながらこの『OJT』という用語、まったく知りませんでした。

15年も組織から離れると、そういうビジネス用語、全然耳にしないし使う場面もないんです。

でも、さらに恥ずかしいのは、その場ですぐに「OJTって何?」って聞けなかったこと。

当然みんなは意味なんか知ってて、知らないのは店長だけで、情けないことに知ってるようなフリして黙ってたんです。

その場にいた人はみんないい人達で、店長が無知をさらけ出したとしても、別にバカになんてしないはずなのに。

でも話の流れから、なにやら研修のようなものなのかなーと思っていました。

 

そして、みんなの会話を聞きながら、

(『OJT』……。O→おにぎり J→ジュース T→卵焼き??)

などと思い浮かべて、独り心の中でウケてました。

 

そして翌日。

夫に、「そういえば、昨日話題に出たOJTって何?」と尋ねてみました。

すると、

「On the Job Training の略。職場で実務をしながら訓練すること」

と、さすがに組織に勤める夫、教えてくれました。

「なんだ、やっぱり研修じゃん」と言う店長に、「ただの研修ではないのだ云々……」と詳しい解説をしてくれましたが、まったく頭に入ってこない店長。

そしてさらに彼は言いました。

 

夫:「あ、そういえば、『KYT』ってのもあるんだよ。さて何でしょう?」

店長:「何それ。『空気、読めない、ティーチャー』?」

夫:「近い! 『危険予知トレーニング』です」(全然近くない)

店長:「は? どうして『危険予知』だけ日本語のまま頭文字?」

夫:「知らん。でもそうなの!」

 

不思議すぎる。ビジネス略語。

やっぱり、店長、苦手です。

これはおそらく長年組織を離れていることが理由ではありません。

もともと、横文字のビジネス用語が苦手なのです。

まず覚えられないし、略し方が意味不明だし、言いにくい。

はるか昔の就活中、ビジネス用語をスマートに駆使する仲間に、深い溝と羨望を感じて焦った記憶がよみがえります。

 

というわけで、ビジネス用語にめっぽう疎い店長ですが、皆様見捨てないでください。

 

 

 

 

 

 

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 08:04
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お母さん?

先日、姉が言いました。

 

「この間、20代の若者と話す機会があって……」

 

どうも仕事先で、20代の若い男性とお話ししたそうです。

彼は若者らしい熱い情熱を持って仕事に向き合う青年で、でも何やら仕事関係で嫌なことがあったらしい。

 

姉:「その彼がね、なんか自分が頑張ってチャレンジした結果が芳しくなくて、

   逆にライバルに負けちゃって、すごく悔しかったらしいの」

 

姉は、先輩として年長者らしく、若者の話をふんふんと聞いてあげた様子。

すると、ひとしきり悔しい思いを打ち明けた後で、若者が言ったそうです。

 

「いやあ、なんかスミマセンでした。愚痴ばかり聞かせてしまって。

 でも、Mさん(姉)ってなんか、

 お母さんみたいで、すごく話しやすかったです!」

 

……。

「お母さん?!」

「それはないわー」

「ひどいひどい、失礼ー!」

姉の話を聞いていた40代の我々一同(全員子無し)、猛抗議。

でも、全然あり得る話なんです、残念ながら。

まだギリギリ40代の姉ですが、20代の子供がいても全くおかしくない。

そして、20代男性から見たら、我々世代は完全に「お母さん」世代。

わかってはいるけれど、やっぱりショック。

飼い犬に向かって「母ちゃん、帰って来たよーハート」なんて言っちゃってる姉ですが、犬に向かって「母」になるのと、成人した人間に対して「母」になるのとでは、やっぱり訳が違うのです。

見た目はどうであれ、年齢がいくつであれ、そんな覚悟はできていない我々。

 

姉:「でもさ、彼には全然悪気はないんだよ」

店長:「そうだね。むしろ『お母さんみたいで親近感!』ってアピールだよね」

友人:「その一言がどれだけ相手を打ちのめしているか、全然自覚ないんだろうね」

店長:「考えてみれば、私達だってかつて20代の頃、当時の40代の先輩達に、

   そういう不用意な発言を平気でしてたかもしれない」

友人&姉:「してたね。絶対にしてたね」

 

というわけで、現在の若者から「お母さん」扱いされても、文句は言えません。
むしろ、喜ばないといけないのかもしれない。

下の世代から頼られ、必要とされるのは、有難いことです。

 

とはいえ、「お母さん」っていうのはやっぱり微妙。

でも「微妙」なんて言っているうちに、あっという間に「おばあちゃん」になりそう。

自分の立ち位置を客観的に図るのがなかなか難しい40代。

たびたび浦島太郎のような気分になる店長です。

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 08:43
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心を実況

亡くなった祖母は、たびたびテレビを見ながらしゃべっていました。

アナウンサーとの挨拶に始まり、テレビに映る様々なものに対して、

 

「なんとまあ! コレすごいね、ちょっと見てごらん!」

「あれまあ、綺麗な顔した人だねえ……」

「ちょっと、フミコ(店長の名前)、この人、面白い顔してるね!」

 

などと、思ったことをいちいち伝えてくるので、可愛らしいとは思いながらも、幼い店長からは「黙って見てればいいのに」と思えて、とても不思議でした。

でももしかしたら、小さな孫を相手に会話して、言葉で気持ちを表現する術を教えていてくれたのかな、と思っていたのです。

 

でも違いました。

最近わかったのですが、祖母の言動に、別にそんな深い意図はありませんでした。

 

以前、帰省した折に、実家で両親とバラエティ番組を見ていた時のことです。

黙って見ている父と店長の前で、母が延々と心の内を実況していました。

 

母:「あれ! ちょっと、コレ、どういうこと?」

父&店長:(黙って視聴)

母:「ヤダヤダヤダ、ちょっと! え? え? ヤッダー!」

父&店長:(黙って視聴)

母:「ウソ!  ホント? ウッソ! ホント? えええー?!!!」

父&店長:(黙って視聴)

母:「ねえ、ちょっと。見て見て!」

父&店長:(見てるよ、と思いながら黙って視聴)

母:「いや〜、可笑しいよー。笑っちゃうー。あははは〜」

 

祖母がいつも座っていた席で、祖母に瓜二つの姿で、テレビに対して自分が感じたことをすべて言葉に出している母。

これは……別に深い意味はないな。そして明らかに遺伝(祖母は母方)。

ただ思ったことを口に出す、心の動きを実況する血が受け継がれているのです。

 

しかも、素面の時には無言の父も、ひとたびお酒が入るやいなや、祖母や母を上回る怒涛の実況を披露。

皆から「うるさい」と言われ、家族全員が寝た後も、テレビに向かって独りでずーっとしゃべっています。

いつも居間の隣の部屋で寝る店長には、父のその実況がよく聞こえるのです。

「お? アレだろ? あの〜、アレだ! ほれキタ、やっぱり! たははっ!」

「まあ、おそらく、そうだろうな!」

「おっ? んんんー? ほう? こりゃまた……」

とかなんとか、たった独りで延々と。

そしてひとしきりしゃべった後は、

「さーて、そろそろ寝るとするかねェ〜。皆の衆は寝たか?

 お、誰もおらんな。そうかそうか、俺を置いて皆寝たか。フフフッ!

 あー今日はいい一日だったなああああ!」

と言いながら寝室へ向かいます。

 

隣室の布団の中で毎回それを聞きながら、店長は思うのです。

自分、この脈々たる遺伝子を受け継ぐわけですから、20数年後にはきっと心の内をダダ漏れさせること間違いなし。

姉に言わせると、「今も十分漏れてるよ」とのことですが、将来の自分は、祖母や両親のように可愛らしい明るい実況ができるだろうか。

悪口や愚痴や毒ではない、漏れても大丈夫な心の内でありますように!

 

 

 

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 08:13
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誕生日の虹

今年の店長の誕生日は、友人Mの夢で始まりました。

中学、高校と同じクラスで、同じ部活だったMと2人で、お寺のような施設でお膳に料理を並べている夢。

しかもうまく並べられなくて焦っている我々。

まったくもって意味不明。

目覚めてから謎夢に頭をひねっていると、そのMから「誕生日おめでとう」メールが。

「いつか一緒に宿坊に旅をしてみよう」という話になりました。

 

そしてしばらくすると、別の友人Nから電話。

「はい、もしもし」と店長が出ると、受話器の向こうから唐突に合唱が聞こえてきました。

『ハッピーバースデイ』を歌うNの3人の子供たちのかわいい声と、Nの高らかな美声。

みんな、ありがとうね!

 

さらに、その日の営業も終わりに近い夕方、幼馴染のK一家がはるばるご来店。

たまたま娘さんの演奏会で長野市を訪れ、その合間に中寿美まで足を延ばしてくれました。

店長が小さい頃お世話になったKのご両親にも久しぶりに再会し、Kの奥様にも初めて会えて、もうそれだけでも嬉しいのに、

「間違っていなければ、たしか今日、誕生日だよね?」

と、お花を渡してくれるK。

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なんて男前?! 

さすがだな、キミは。

そうえいば、Kは昔から優しかったなあ。

 

夕立の中、懐かしい話に花を咲かせて、雨が上がったタイミングでK一家を見送るために一緒に駐車場に出た店長。

すると、ちょうど常連様のKさんがご来店して、

「ねえ! キレイな虹が、二重にかかってるわよ!」

と中寿美の屋根上の空を指差します。

みんなで振り返って見上げると、そこには2つの美しい虹が!

 

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「すごいすごい!」と歓喜して、写真撮影大会と化す一同。

店長の腕とカメラの能力的に限界があり、薄ーい虹に見えますが、実際はもっとハッキリとした美しい虹でした。

Kの奥様の「誕生日の虹ですねハート」という言葉に、じ〜んとしてしまう店長。

ホント、素晴らしい誕生日だなあ。

あまりに嬉しいから、47回目だということを書いちゃうよ。

 

考えてみると、今年だけじゃなく、これまでもいろんな方に祝っていただいたなあと有難く思い出されます。

47回も迎えてるんだなあ。

だけど、しみじみと「誕生日」の意味を感じたのって、39回目くらいからだった気がするなあ。

ってことは、店長、まだ8歳ということで、よろしくお願いします。

 

この日、店の片づけを終え、「そうえいばお昼食べる時間なかったなあ」と空腹感を抱えて住居スペースに戻ると、夫が書いた「誕生日おめでとう」メッセージの置手紙と共に、夫が作ったゴーヤチャンプルーが残されておりました。

やっぱ今年の誕生日、最高!

 

 

タマアジサイ、咲きました♪

P1014439.JPG

 

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 09:20
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きれいですね

オープン以来、お客様の年齢層は若干高めのcafé中寿美。

でも、近ごろは若いお客様も増えてきました。

 

先日、大学生と思しき男性がご来店され、ケーキセットをご注文されました。

店長がケーキをテーブルに置いたタイミングで、お客様が一言。

 

「なんか、きれいですね」

 

ん? きれい? 何が? ケーキが?

さすがに店長、自分のことだとは思いません。

 

すると若者が、店内を見まわしながら続けました。

 

「どれぐらい経ってるんですか? ここ」

 

ああ、建物のことね!

「もう10年経つんですよー」と答えると、「そんな風には見えませんね。きれいですね」とのこと。

ありがとうございます。何であろうとお褒め頂いて嬉しいです。

 

そしてカウンター内に戻ってホッとする店長。

これ、自分がもう10歳若かったら、厚かましくも勘違いしたかも!

10年前なら、「きれい」が自分に向けられた可能性を捨てきれず(ほんと厚かましくてすみません)、顔を赤らめる自意識過剰を発揮したかも。

よかった。

大丈夫。

全然勘違いしません。

赤面してない私、厚かましい勘違いをしなくなった自分、成長した。

そして、年取った……。

 

だけど。

「きれいですね」と言ったお客様が、あと20歳年上だったら、やっぱり赤面しちゃうんじゃないだろうか?

いかんいかん。

まだまだ修行が足りない店長です。

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 09:45
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オープン前夜の夢

café中寿美のオープンは10年前の秋ですが、その開店初日前夜に見た夢を、今もはっきりと覚えています。

 

皆様ご存知のように、café中寿美は店長一人でやっている山の中の小さな喫茶店で、幹線道路からも外れているし、目立つ看板も出していません。

今でこそ、事前に場所を調べてわざわざ訪れてくださるお客様も増えて、大変ありがたい限りですが、オープンに際しては特別な告知もしておらず、交通事情も悪い山の中ですから、「開店初日に閑古鳥」という事態が予想されました。

 

それなのに、オープン前夜に店長が見た夢は、

『店内満席のうえ次から次へとお客様がやってきて、大パニック!』

というものでした。

「用意したメニューの在庫が次々と切れ、オーダーを取る伝票までも切らしてメモ用紙で代用する」という細部にまで凝ったもの。

お手伝いの姉と二人、焦りまくって謝りまくって、いろいろが間に合わなくて大汗をかくという、目覚めてからもげっそりとするような夢。

 

オープンを控えてそんな夢を見る店長、ネガティブなんだか、ポジティブなんだか。

 

さて、現実はどうだったか。

期待と緊張を胸に迎えたオープン初日は、当然ながら満席になんてならなかったけれども、それなりに忙しかった記憶があります。

あの日訪れてくださった皆様、本当にありがとうございました。

あの日の店長は何もかも初めてで、とにかく気が高ぶり、話しかけられると手が止まり、必要のない食器を出し、人数を数えられず、落ち着きなくアタフタとして、一日が終わる頃にはドッと疲れていました。

とにかくクタクタに疲れて、そして嬉しかった初日の思い出。

 

つい最近、ふと思いついて初日の来客データを調べてみた店長。

あんなにバタバタと焦って、ヘトヘトになった初日の来客数が、驚いたことになんとたった15名様!

しかも、姉と2人で対応して、あの疲労感だったのです。

 

相変わらず、café中寿美は、夢で見たような「満員御礼」なんてめったに出ない、基本的にはひっそりとした静かな店です。

でも今は、1日に40名様ぐらいまでなら、1人で対応できるようになりました。

それ以上の時は、バイトの友人達がいてくれるので鬼に金棒です。

オープン間もない頃は、お客様が訪れるたびに、「ああどうしよう、どうしよう」と及び腰の店長でしたが、訪れてくださるお客様と、10年という時間の経過のおかげで、ボンクラの店長もいつの間にか鍛えられました。

 

はじめから、なにかもかも上手くやろうなんていうのは不可能です。

何事にも最初があって、それは慣れないことで大変で、ストレスも苦労もあります。

「こんなんで、この先どうしよう?」という不安で、暗澹たる気持ちになることもしばしば。

でも、目の前の事をひたすら続けて、ある程度の時間を経て振り返ってみれば、わずかながらでも成長に気づくことがあります。

もっと若い時に、そういう経験を積んでおけばよかったと反省しながら、

きっとこれからは、「できなくなること」も増えていくんだろうなあ、と覚悟する店長です。

 

 

 

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 09:36
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