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心を実況

亡くなった祖母は、たびたびテレビを見ながらしゃべっていました。

アナウンサーとの挨拶に始まり、テレビに映る様々なものに対して、

 

「なんとまあ! コレすごいね、ちょっと見てごらん!」

「あれまあ、綺麗な顔した人だねえ……」

「ちょっと、フミコ(店長の名前)、この人、面白い顔してるね!」

 

などと、思ったことをいちいち伝えてくるので、可愛らしいとは思いながらも、幼い店長からは「黙って見てればいいのに」と思えて、とても不思議でした。

でももしかしたら、小さな孫を相手に会話して、言葉で気持ちを表現する術を教えていてくれたのかな、と思っていたのです。

 

でも違いました。

最近わかったのですが、祖母の言動に、別にそんな深い意図はありませんでした。

 

以前、帰省した折に、実家で両親とバラエティ番組を見ていた時のことです。

黙って見ている父と店長の前で、母が延々と心の内を実況していました。

 

母:「あれ! ちょっと、コレ、どういうこと?」

父&店長:(黙って視聴)

母:「ヤダヤダヤダ、ちょっと! え? え? ヤッダー!」

父&店長:(黙って視聴)

母:「ウソ!  ホント? ウッソ! ホント? えええー?!!!」

父&店長:(黙って視聴)

母:「ねえ、ちょっと。見て見て!」

父&店長:(見てるよ、と思いながら黙って視聴)

母:「いや〜、可笑しいよー。笑っちゃうー。あははは〜」

 

祖母がいつも座っていた席で、祖母に瓜二つの姿で、テレビに対して自分が感じたことをすべて言葉に出している母。

これは……別に深い意味はないな。そして明らかに遺伝(祖母は母方)。

ただ思ったことを口に出す、心の動きを実況する血が受け継がれているのです。

 

しかも、素面の時には無言の父も、ひとたびお酒が入るやいなや、祖母や母を上回る怒涛の実況を披露。

皆から「うるさい」と言われ、家族全員が寝た後も、テレビに向かって独りでずーっとしゃべっています。

いつも居間の隣の部屋で寝る店長には、父のその実況がよく聞こえるのです。

「お? アレだろ? あの〜、アレだ! ほれキタ、やっぱり! たははっ!」

「まあ、おそらく、そうだろうな!」

「おっ? んんんー? ほう? こりゃまた……」

とかなんとか、たった独りで延々と。

そしてひとしきりしゃべった後は、

「さーて、そろそろ寝るとするかねェ〜。皆の衆は寝たか?

 お、誰もおらんな。そうかそうか、俺を置いて皆寝たか。フフフッ!

 あー今日はいい一日だったなああああ!」

と言いながら寝室へ向かいます。

 

隣室の布団の中で毎回それを聞きながら、店長は思うのです。

自分、この脈々たる遺伝子を受け継ぐわけですから、20数年後にはきっと心の内をダダ漏れさせること間違いなし。

姉に言わせると、「今も十分漏れてるよ」とのことですが、将来の自分は、祖母や両親のように可愛らしい明るい実況ができるだろうか。

悪口や愚痴や毒ではない、漏れても大丈夫な心の内でありますように!

 

 

 

author:中寿美, category:店長のひとりごと, 08:13
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