埼玉に住む友人宅を訪れた店長。
友人宅へ向かう都内の駅で、ふと思いついて、ついにSuicaを買ったのです(今頃)。
「滞在中、何度も都内で電車を乗り降りする予定だし」と。
券売機の前で、「アタシが東京在住だった20年前にはJRのカードといえば『オレンジカード』だったけれど、アレとは違うんだよね。これは残高が足りなくなったらチャージして繰り返し使えるカード。しかもオレンジカードと違ってSuicaはそのまま直接改札を通れるのだよね……」と、すっかり都会の交通事情から遠ざかっていた店長は感慨に浸ります。
もっと若い時なら、モタモタするのは恥ずかしいので、事前にある程度調べてから購入したはずの店長ですが、オバサンになると図々しくなるもので、思いつきで使い方も知らずに買うのはどうってことはないのです。
それでも、切符を買うのと同じように、意外にすんなりSuicaを手に入れた店長、意気揚々と改札に向かいます。
人の波に乗って改札を通る瞬間に、「あ!」と思いました。
Suicaをどこに通せばいいのか知らなかったのです。
けれども前後を人に挟まれて流れに乗っていたため、いつもの動作に体が反応してしまいました。
切符が吸い込まれるはずの場所に、無理矢理Suicaを突っ込んだ店長の前で、無情に閉まる改札。
(あーーー。うん、違うとは思った)と思いながら、そそくさと改札を戻って周囲をチラ見した店長。
颯爽と改札を通り抜けていく人々は、手の中のカードらしきものをかざして改札を通っているようではあるけれど、そのカードが店長と同じSuicaであるとは限らない。
同じ失敗を繰り返すのは嫌だったので、すぐ脇にあったみどりの窓口に入り、駅員さんに尋ねました。
「すみません〜。
今Suica買ったんですけど、どうやって改札を通ればいいんですか?」
一瞬キョトンとした駅員さんでしたが、「青いランプの点いている場所に、Suicaをタッチさせてください」と、バカになんてせずに教えてくれました。
以上の顛末を、友人宅にて報告したところ、
友人:「マジで?! 笑えるーー!! すごい『オバサン』ぶりだね(笑)」
友人夫:「それは……(笑)。みどりの窓口ではきっと噂になっているはず。
『ヘンな人来たよー』って」
と、大いに笑われた店長。
いやー、でも、Suicaって楽ですね。買ってよかったです。
そして後日。
今度は友人夫婦と地下鉄駅にて待ち合わせした時のこと。
切符を買った店長に対して、驚きながら友人が言いました。
友人:「あれ? Suicaあるでしょ?」
店長:「え? だって地下鉄だから。もうJR乗らないから、Suicaはしまっちゃったよ」
友人:「……。Suica、地下鉄、使えますけど……?(笑)」
店長:「ええっ?! 地下鉄でも使えるの?! JRだけじゃないの?」
友人:「(笑) っていうか、店とかでも使えるし!(大爆笑)」
店長:「えーーー! 知らなかったーーー!」
友人夫:「今は、地方の私鉄とかを別にすれば、たいていは相互利用ができて……」
友人:(大爆笑)(大爆笑)(大爆笑)……
めちゃくちゃ嬉しそうに大爆笑を続ける友人に対して、爆笑も失笑もせず、淡々と説明をしてくれる友人夫はさすがに東京育ちのイケメン紳士。素敵。
でもまあ、大爆笑の友人も、美味しい手料理をたっぷりと食べさせてくれて、店長の行きたいバーにも同行してくれたから、全然OK。
そして、その後、東京に暮らす親戚のおじ様にも会ってきました。
移動はたいてい車で、もう地下鉄もよくわからんよ、というおじ。
都内のホテルのレストランで、
「おじさん、Suicaって、地下鉄も使えるんですね。
私、全然知らなくて、改札で切符入れるところにSuica入れちゃったりして」
と店長が話すと、
「おー、ボクもやったよ!
それでさ、『改札にタッチさせて』って説明する駅員に、
『だって、カードに矢印が書いてあるじゃないか。この矢印の方向に入れろってことだろう?』って言ったんだよ。
そしたら、『それはチャージする機械に入れる時の矢印だ』って言われちゃったな」
と、御年85歳のおじ。
どこのホテルにいても、パリッとしたホテルマンが次々と挨拶に来るようなおじでも、店長と同じような失敗するんだなあ。
ちょっぴり安心した今頃Suicaデビューの店長です。