蕎麦屋のビジネスマン
- 2018.03.29 Thursday
- 08:12
お蕎麦屋さんで一人ランチをした時のこと。
店長のすぐ後ろのテーブルに、グループのお客様がやってきました。
背を向けていたので、どんな人たちなのか一切わからなかったのですが、会話の様子からどうやら4名のビジネスマンの模様。
A(年配):「イヤイヤイヤ〜、今日は本当にありがとうございました。
イヤさすがです、スズキ(仮名)さんのお話。
目からウロコといいますか、長野ではなかなかねぇ……。
イヤイヤ〜、大変勉強になりました」
スズキ氏(30代):「(謙遜せず)ま、色々大変かもしれませんが、ご参考になれば。
さて、信州と言えば蕎麦ですよね! 楽しみです(キリッ)」
B(30代):「でも東京も蕎麦は有名ですよね。江戸っ子の粋で」
スズキ氏:「ええまあ、でも一口に江戸っ子って言っても、今はいろいろですね」
A:「スズキさんは、東京のどちらで?」
スズキ氏:「渋谷です」
一同:「おおおおー! 渋谷!」
長野の人間を圧倒する「渋谷」の威力、凄まじいわーと店長が聞き入っていると、上司と思われる年配Aが「おい、ナカザワ(仮名)君、注文を」と指示し、Bとは違う、もっと若い声が店員さんにたどたどしくオーダーする声が聞こえてきました。
どうやら、4名の内訳は、「地元企業のサラリーマン(上司A・中堅B・新人ナカザワ)+東京から招いた若きコンサルタント=スズキ氏」といった感じ。
社内セミナーでも開催したのでしょうか。
店長の背後で、東京と長野を比較しながらの様々なトークが繰り広げられていきます。
ひたすらスズキ氏を持ち上げる卑屈なまでの上司A、かすかなライバル心を抱えながら話題提供する中堅B、一切しゃべらないと決めたのかそれともしゃべれないのか、発言が皆無の新人ナカザワ。
スズキ氏は声が通り、話し方も意見もしっかりとしていて有能そうだけれども、チラチラと覗く上から目線の態度が鼻につきます。
いるいる、こういうヒト。
頭はキレるのかもしれないけど、なんか好きになれないんだよね。きっと服装もパリッとイケてるスーツで決めているに違いない。そして間違いなく靴の先が尖っているはず。
お蕎麦を啜りながら4名のビジネスマンの姿を思い浮かべ、背後のテーブルの会話に全力で聞き耳を立てる店長。
背を向けているとはいえ、声の位置から上座にスズキ氏がいるのがわかります。
店長の想像が、どれだけ実像と合っているのか、早く答え合わせがしたい。
特に気になるのはスズキ氏。
足元まで見えるかどうか。
そしてついに蕎麦を食べ終えた店長は席を立ち、会計に向かう間にさりげなく背後のテーブルへ目を遣りました。
地元サラリーマンは想像にたがわぬ無個性のスーツを着た3人組。
ほうらやっぱり。
だがしかし! 残りの一人が異彩を放っています。
なんと、上座に座るスズキ氏のいで立ちは、坊主頭にゴールドのスカジャン、ダボダボジャージにスニーカー。
え? ヤンキー? チンピラ?
え? え? どういう集まり?
謎を抱えて蕎麦屋を後にする店長でした。
- 店長のひとりごと
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